2009年11月09日

お経

もう10年以上前の話だ。
友人と二人、行き先は決めずに走る
キャンプツーリングへ行った時の事だ。

季節は10月。
ツーリングの何日目だかは忘れたが
寝床を探し、やっと見つけたキャンプ場
受付で聞くと、何と一泊3000円。
『高すぎる!』 と、友人と話し
別の場所を探す事にした。

山道へ入り、迷うように走っているうちに
地図を見ても、何処にいるのか分からない状態になった。

大きな道を見つけ走っていると
今度は、見覚えのある風景。
1時間〜2時間かけて山を回り
同じキャンプ場のある場所へ戻ってしまったのだ。

『仕方が無い!時間も遅いし、高い金払うか!』 と
友人と、そのキャンプ場にテントを張る事にした。

夕食を済ませ、焚き火にあたりながら酒を飲み
男同士の、くだらない話が盛り上がっていると
『キャ〜〜〜』 と、女の悲鳴に聞こえる鹿の鳴き声。
昼と夜の温度差で、木が ”パキッ!パキッ!” と鳴る。
キャンプも慣れてくると、多少の物音には動じない。

『シッ!』
人差し指を立て、口元に当てて
俺は友人に向けた。
耳を澄ますと、遠くから微かに何かが聞こえる。
”ポクッ!ポクッ!ポクッ!ポクッ!・・・”
木魚?・・・
そして、節のある男の声。
お経?・・・
テントサイトには二人だけ。
俺達は、全ての動きが止まり
ただ、音と声のする方向を見つめた。

森の奥、小さな光の点。
その点が、木魚とお経と共に近づいてくる。
視線を外せない。
少しずつ、少しずつ、確実に近づいてくる。

『こっちに来るぞ!』 声は出ない。
もうすぐそこに、何かがいる!
森の中、木を2・3本隔てて
こっちを見ている。
耳元で聞こえるような木魚とお経。
俺達と何かとの睨み合い。
”負けたら駄目だ!” 何となく感じる意思。

やがて、少しずつ遠ざかっていく光と音。
どの位の時間だろう・・・。
光と音が完全に消えるまで
友人と二人、ただじっとそれを見ていた。



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